AIがつくる“80点”を人が磨く——ラストワンマイルが残る理由
AIが自動で提案スライドを作成する——そんな仕組みを実現できたら、業務効率は大きく向上します。私もその可能性を探るため、「AIによるスライド自動作成ワークフロー」を検討しました。
企業スライドには“変えられない部分”がある
まず前提として、企業で使う提案スライドには、独自のルールがあります。
背景画像やフォントサイズ、ロゴ位置など、統一されたテンプレート を必ず使用する必要があります。さらに、扉ページや会社紹介、最後のまとめページなどは常に同一の内容を使います。
つまり、「AIにすべて生成してもらえばいい」というわけにはいかず、変えてはいけない部分と、AIに任せたい部分をきちんと分ける必要 があるのです。
実現を目指したシステム構想
今回考えたワークフローは以下の流れです。
- 人間が、顧客ごとの提案内容を登録する
- ChatGPTのようなチャットエージェントが、スライドの骨子を作成する
- テンプレート管理システムから、固定ページやデザインルールを取得する
- それらを組み合わせてスライドを自動生成する
- ワークフローシステムでこの流れを自動化する
個々の仕組みはすでに存在しており、技術的には不可能ではありません。しかし実際に運用を考えると、「AIがテンプレートを厳格に守りながら、見た目と論理の整ったスライドを出力する」 ところで壁にぶつかります。
最後の仕上げは、人の感覚が必要
AIは構成や内容の「骨子」をまとめるのが得意ですが、フォントのサイズ感やスライド間の流れ、文字量の調整など、“人が感じる整合性” はまだ苦手です。そのため、AIが生成したスライドを人間が確認・微調整する「Last 1 mile」 が必要になります。
とはいえ、これは悲観すべきことではありません。 AIが80点の下地を作り、人がそこに業務知識と感覚を加えて95点に仕上げる—— その過程は、従来よりもずっと効率的になっています。
“AIを使いこなす人”が価値を持つ時代へ
AIの進化によって、「誰でも資料を作れる時代」になりました。 しかし、企業が求めるのは “それなり”ではなく“伝わる資料” です。
「業務知識の ない 人がAIを使えば、80点の成果が出せる」
「業務知識の ある 人がAIを使えば、短時間で95点の成果が出せる」
この違いが、今後のAI時代を左右するポイントだと考えています。 しばらくの間は、AIがつくる“80点”を人が磨き上げる “ラストワンマイル”の工程 が残るでしょう。 そして、その磨きをかけられる人こそが、AIを活かす真の価値を発揮するのだと思います。
Small Pieceとしても、この「AI × 人の協働」によって、より高品質で効率的な成果を生み出す仕組みづくりを支援していきたいと考えています。